鬼ノ血

剣士の誇り

1. 決戦の幕開け

カァァァァン!!

竹刀と刀が激突する。

想乃叶と九条院宗士——
剣士同士の戦いが、ついに始まった。

「……速い」

九条院が微笑む。

「だが、それだけじゃ俺は倒せないよ」

バシュッ!!

九条院の刀が想乃叶の頬をかすめる。

「くっ……!!」

想乃叶はすぐに間合いを取り、深呼吸する。

(落ち着いて……)

("剣士"として戦うんだ……!)

「ほう……冷静だね」

九条院が微かに目を細める。

「なら、これならどうだ?」

——ズズズ……!!

九条院の体が闇に包まれた。

「"羅刹融合"」

「……ッ!」

九条院の体が変化する。
白い肌が黒く染まり、瞳が深紅に輝く。
手にした刀が、まるで生きているかのように脈打つ。

「"鬼"の力を得た剣士は、どれほど強いのか」

「お前に教えてやるよ」

ドォォォン!!

九条院が踏み込んだ。

「速い——!」

想乃叶が竹刀で防ごうとするが——

ズバァァァン!!

防御が間に合わない。

「くっ……!!」

腹部に鋭い痛みが走る。
九条院の刀が、想乃叶の防御をすり抜け、浅く斬り裂いた。

(この速さ……!)

(今まで戦ったどの羅刹よりも……"強い"!!)

「どうした?」

九条院が微笑む。

「"剣士"の力は、それが限界か?」

「……ッ」

想乃叶は竹刀を握り直す。

(違う……これは"恐怖"だ)

(私は、"鬼"にならないと勝てないのか……?)

「フフ……"迷い"が見えるよ」

九条院が冷たく笑う。

「お前は"鬼"にならないと、俺には勝てない」

「さあ——"力"を解放しろ」

「"鬼"になれ!!」

「……!!」

想乃叶の中で、何かが揺れる。

「想乃叶!!」

土方の声が響いた。

「剣を見失うな!!」

「お前は"沖田総司"だろ!!」

「"鬼"になるな!! "剣士"として戦え!!」

「……!」

(そうだ……私は……)

("鬼"にはならない……!)

(私は——"剣士"だ!!)

ゴゴゴゴ……!!

竹刀が、紅く輝き始める。

「……またそれか」

九条院が目を細める。

「なら、見せてもらおう」

「"剣士"の誇りとやらを!!」

2. "緋桜・極"

バシュッ!!

想乃叶の竹刀が、音もなく九条院を斬り裂く。

「……ッ!?」

九条院の表情が、一瞬だけ驚きに染まる。

(今の……何が起きた!?)

(視えなかった……!?)

「お前は"速さ"に頼りすぎた」

想乃叶が静かに言った。

「剣士に必要なのは"速さ"だけじゃない」

「"間合い"を支配する力」

「それが——"剣士の極意"だよ」

「……ッ!!」

九条院が身を引くが——

ズバァァァァン!!

「ガハッ……!!」

胸に深い斬撃が刻まれる。

(この……俺が……!?)

("鬼"の力を得た俺が……!?)

「俺が……負ける……?」

「フフ……フハハハハハ!!」

九条院が笑い出す。

「最高だ……!!」

「お前は本物の"剣士"だ……!!」

「だが——」

「まだ、終わらないぞ!!」

ゴゴゴゴ……!!

九条院の体が、膨れ上がる。

「ククク……"核"を破壊される前に——」

「"羅刹王"の力を、完全に取り込んでやる!!」

「想乃叶!!」

土方が叫ぶ。

「こいつを"斬れ"!!」

「……分かってる!!」

想乃叶が竹刀を構える。

「——"緋桜・極"」

ズバァァァァァァァァン!!

一瞬——

世界が、静寂に包まれた。

3. 決着

九条院宗士の体が、静かに崩れ落ちる。

「……バカな」

「俺が……この俺が……負ける……?」

「"鬼"ではなく——"剣士"に……?」

「フフ……最高の……皮肉だ……」

九条院は、最後の力で微笑み——

——静かに、消えた。

ドォォォォン!!

同時に、"羅刹王"の体も崩壊し始める。

「終わった……!!」

桂が呟く。

「想乃叶が……勝ったんや……!!」

龍馬が歓喜の声を上げる。

「フッ……やりやがったな」

土方が微かに笑う。

「……ッ」

想乃叶は、静かに竹刀を握りしめた。

(私は……"鬼"にならずに……)

(剣士として——戦えたんだ)

「……ありがとう」

想乃叶は、竹刀を静かに納めた。

(沖田総司——私の中の"剣士"よ)

(私は、これからも"剣士"として——生きていく)

——新選組最強の剣士として。
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