十五年の石化から目覚めた元王女は、夫と娘から溺愛される
 料理はおいしいもののあまり楽しい雰囲気とは言えない晩餐が、やっと終わった。

 王太子は「こんどまたあそぼうね」とディアドラの手を握り、それにディアドラも笑顔で応じたのでよかったとして、カミラは相当疲れてしまいディアドラを抱えてさっさと帰ることにした。

 屋敷に帰るとメイドにディアドラを預け、温かい湯にじっくり浸かる。寒い時期なので、温かい湯がとてもありがたい。
 なお残り湯は使用人たちが入浴のときに使えるので、主人一家が温かい風呂に入るというのは誰にとっても嬉しいことだった。

(ルークが帰ってくるまで、あと十日くらいね)

 予定表を確認してから、カミラは二階に上がった。まずは子ども部屋にいるディアドラの様子を見に行き、お腹いっぱいでうとうとしている娘の頬にキスをしてから自室に向かい――その途中ふと、夫婦用の寝室の方に目をやった。

 カミラは女主人用の部屋で寝ているため、あの寝室を使ったのはルークと別れる前の夜だけだ。そして今は無人だが、ルークが帰ってきたら彼はあの部屋で休むことになる。

(……また、あの部屋に呼ばれることがあるのかしら)

 ぎゅっと寝間着の胸元を掴むカミラの頬は、少しだけ温かい。それはきっと、湯上がりだけが原因ではないだろう。

 あの夜は色々と初めての経験ばかりで体も心も翻弄されっぱなしだったが、あれから二年経った今は気持ちとしてはかなり落ち着いている。
 ルークのことも夫婦として、家族として共にありたいと思えるようになったし、もしあの部屋に誘われたとしても二年前のような諦念やらを感じることはないはず。

(ルークも同じ気持ちだったら……嬉しい、かも)

 そんなことを考えるとますます顔が熱くなりそうで、カミラは逃げるように自分の部屋に向かったのだった。
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