十五年の石化から目覚めた元王女は、夫と娘から溺愛される
「知らなかったわ。あなた、ずっと昔から私のことを愛してくれていたのね」
「……はい。少年の頃の初恋はよいとして、結婚してからずっと、あなたに愛を貫いております」
「ええ、ディアドラからもそう教えてもらえて……嬉しかったわ」
でも、とカミラは苦笑した。
「素直になれないのは、私も同じね。……私、十五年前はあなたのことを異性としてなかなか意識できなかったの」
「それも当然でしょう。当時の私は、十六歳の若造でした」
「そうね。でも、今のあなたはとっても素敵な大人の男の人で……しかも、ずっと私のことを愛してくれていると言ってくれたのだから、私も好きになってしまいそうなの」
「えっ」
「迷惑だったら、ごめんなさい。私はディアドラの母親としては若すぎるし、今のあなたから見たら年が離れすぎているかもしれないから……」
「迷惑だなんて!」
ルークはひっくり返った声を上げ、カミラの両手をがっしりと掴んだ。
大きくて硬い、まめが潰れて板のようになった武人の手だった。
「私こそ、石化して年を取らないあなたと違いすっかり老けてしまい、隣に立つのが申し訳ないと思っておりました」
「老けてなんかいないわ。むしろ、とっても素敵よ」
カミラが正直に言うと、ルークの頬がさっと赤らんだ。若い頃より素直になった彼だが、こういうところは昔から変わらないようだ。
「カミラ様、どうかこれからも私のそばにいてください。……これから、共にディアドラを見守っていきたいのです」
「ルーク……」
ルークの手が、そっとカミラの肩に触れる。
少し顔を傾けたルークが「カミラ様」とどこか艶っぽい声で名を呼んできて、カミラの胸がときめきで震える。
「口づけてもよろしいですか?」
「……ええ、もちろんよ」
生真面目な彼は十七年前の初夜の間でさえ、カミラの唇を奪おうとしなかった。あれもきっと、愛されていなかったからではなくてカミラに無理強いをしたくなかったからなのだろう。
ルークは、言葉が足りなかった。
カミラは、自分で決めつけて逃げてしまっていた。
(でも、きっと大丈夫だわ)
そっと、唇が重なる。
二人が結婚して、カミラの体感では二年、ルークとしては十七年。
やっとたどり着けた、ファーストキスだった。
触れるだけの唇がそっと離れて、どちらも微笑み合う。
「ルーク。私……あなたのこと、好き。きっと昔から、あなたのことを心の奥底では好きだったわ」
「カミラ様……」
ルークはごくっと喉を鳴らすともう一度唇を寄せ、先ほどよりは少しだけ強引にカミラの唇を奪った。
「カミラ様」
「ん、ルーク?」
「……今宵、私と共に過ごしてくださいませんか?」
どこか熱っぽく浮かれたようなルークの言葉に、カミラの胸にもボッと火が灯る。
あのルークが、こんな色っぽい表情で、お誘いをしてくれるなんて。
「……今宵だけだなんて、言わないで。私たち、これからはずっと一緒なのだから」
カミラがしっとりと微笑んでルークの首に腕を回すと、カミラの視線のすぐ先でハシバミの色が嬉しそうに弧を描いた。
「ありがとうございます。……愛しています、カミラ様。私の妻――」
「……はい。少年の頃の初恋はよいとして、結婚してからずっと、あなたに愛を貫いております」
「ええ、ディアドラからもそう教えてもらえて……嬉しかったわ」
でも、とカミラは苦笑した。
「素直になれないのは、私も同じね。……私、十五年前はあなたのことを異性としてなかなか意識できなかったの」
「それも当然でしょう。当時の私は、十六歳の若造でした」
「そうね。でも、今のあなたはとっても素敵な大人の男の人で……しかも、ずっと私のことを愛してくれていると言ってくれたのだから、私も好きになってしまいそうなの」
「えっ」
「迷惑だったら、ごめんなさい。私はディアドラの母親としては若すぎるし、今のあなたから見たら年が離れすぎているかもしれないから……」
「迷惑だなんて!」
ルークはひっくり返った声を上げ、カミラの両手をがっしりと掴んだ。
大きくて硬い、まめが潰れて板のようになった武人の手だった。
「私こそ、石化して年を取らないあなたと違いすっかり老けてしまい、隣に立つのが申し訳ないと思っておりました」
「老けてなんかいないわ。むしろ、とっても素敵よ」
カミラが正直に言うと、ルークの頬がさっと赤らんだ。若い頃より素直になった彼だが、こういうところは昔から変わらないようだ。
「カミラ様、どうかこれからも私のそばにいてください。……これから、共にディアドラを見守っていきたいのです」
「ルーク……」
ルークの手が、そっとカミラの肩に触れる。
少し顔を傾けたルークが「カミラ様」とどこか艶っぽい声で名を呼んできて、カミラの胸がときめきで震える。
「口づけてもよろしいですか?」
「……ええ、もちろんよ」
生真面目な彼は十七年前の初夜の間でさえ、カミラの唇を奪おうとしなかった。あれもきっと、愛されていなかったからではなくてカミラに無理強いをしたくなかったからなのだろう。
ルークは、言葉が足りなかった。
カミラは、自分で決めつけて逃げてしまっていた。
(でも、きっと大丈夫だわ)
そっと、唇が重なる。
二人が結婚して、カミラの体感では二年、ルークとしては十七年。
やっとたどり着けた、ファーストキスだった。
触れるだけの唇がそっと離れて、どちらも微笑み合う。
「ルーク。私……あなたのこと、好き。きっと昔から、あなたのことを心の奥底では好きだったわ」
「カミラ様……」
ルークはごくっと喉を鳴らすともう一度唇を寄せ、先ほどよりは少しだけ強引にカミラの唇を奪った。
「カミラ様」
「ん、ルーク?」
「……今宵、私と共に過ごしてくださいませんか?」
どこか熱っぽく浮かれたようなルークの言葉に、カミラの胸にもボッと火が灯る。
あのルークが、こんな色っぽい表情で、お誘いをしてくれるなんて。
「……今宵だけだなんて、言わないで。私たち、これからはずっと一緒なのだから」
カミラがしっとりと微笑んでルークの首に腕を回すと、カミラの視線のすぐ先でハシバミの色が嬉しそうに弧を描いた。
「ありがとうございます。……愛しています、カミラ様。私の妻――」