天使の階段
統吾君は優しい。

でも今は、そんな優しい言葉じゃ癒されない。

「ねえ、統吾君。」

「ん?」

「最後まで、産むかどうか迷ったって、私に言ったよね。」

「……ああ。」

私は統吾君に、何を求めていたんだろう。

「少しも考えてなかった。どうしたらいいか、分からなくて……そのまま放っておいたの。そしたら勝手に、ここまで大きくなっちゃっただけ。」

統吾君は黙って、話を聞いてくれた。

「相手の人も、実は知らない人なの。お金が欲しくて……売ったの、自分の体を。」


軽蔑してほしい。


「赤ちゃんの事なんて、一切考えてなかった。早くいなくなって欲しい……それだけしか、思ってなかった。」




なんて最低な人間だって、傷つけてほしい。

< 36 / 81 >

この作品をシェア

pagetop