天使の階段
「岩崎。」

真っ暗な暗闇の中で、統吾君は口を開いた。

「人はこの世に産まれる時、母親を選んでやってくるって話、聞いた事ある?」

「えっ?」

「岩崎は、その子に選ばれたんだ。自分の母親になってほしいって……」

「私が?」

「もし岩崎が本当に、その子の事を一つも考えていなかったと言うのなら……その子の選択は、間違ってたね。」

ズキッと胸が痛んだ。

「だけど次はもう、その子も間違えない。きっとこの世に、誕生させてくれる人を選ぶと思う。」


ああ、確かにそうだ。

こんなバカな女、母親に選ばないでほしい。


「だから岩崎も、子供達に、またお母さんになって貰いたいって思って貰えるまでには、強い人に成長していないとね。」

それだけを言うと、統吾君は病室を出て行った。

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