天使の階段
その様子を見ていた柊子が、どこからともなく、私の横に歩いて来た。

「な~んでデートの誘いを断るかな~。」

柊子のおせっかいに、ちょっと白い目で見返す。

「怖い顔して。相手はあの大宮君だよ?」

分かってる。

でも……

「デートに着て行く服なんて、ないもん。」


私の家は厳しい家庭だから、お小遣いなんて余計にもらえない。

バイトもさせてくれない。

必然的に遊ぶお金は、持っていない。


「だったらさ……いいバイト知ってるよ。」

柊子は私の耳元で囁いた。

「簡単だし、時間もあんまりかかんないし。何より、お金がいいんだよ。」

私は柊子を見た。

そんなバイト、柊子がやっていたなんて。

「私も週一でやってるんだ。一回やってみて、ダメだったら止めればいいし。」


その時の私は、お金の事で頭がいっぱいだった。
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