天使の階段
私に渡された番号は、547番。

一瞬、目を疑う。

そんなに人がいるの?

それだけ人混みに、酔いそうになった。


「では、皆さん。こちらにお集まり下さい。」

係りの人が、受付の場所にやってきた。

「これから、審査を始めます。まず初めは、ウォーキング。次は、写真撮影。そして最後に、面談となります。」

うわっ!

3つもあるんだ。

急に緊張し初めて、渡された番号札が、汗で滑りそうになった。


「郁。なんか、本格的だね。」

話しかけた郁は、極度の緊張のせいか、既に固まっていた。

「郁?」

「あっ、うん。」

密かに、手が震えている郁。


そして、思い出した。

高校生の時、二人で洋服を買いに行って試着しては、モデルの真似をしていた。

今回のオーディションだって、受けたいって言い出したのは、郁からだった。

私は郁の背中を、軽く叩いた。

「寧々……」

「頑張ろう、郁。」

郁は、笑顔で頷いた。
< 41 / 81 >

この作品をシェア

pagetop