仕事の出来る悪役令嬢、薄幸王子様を幸せにアップグレードしておきました。
「かっ……完璧? 頭でも打ったのか。今まで散々醜い姿だと罵倒していた癖に。どうしたんだお前……刃物のようなものは、俺の宮には置かれない……それはお前とて、知っているだろう」
……そうだ。ウィリアムは王位継承権上の理由から、この宮に幽閉されていても王太子として生かされている。
現王とて今の妻の手前とは言え、自分の息子に対し酷いことをしている自覚はあるのだろう。こんな状況の中でも、自殺することを出来なくしているのだ。
「あ。その設定……鋏にも適応されているんですね。不便ですわ。わかりました! それでは、私が鋏を持ってきますので、少々お待ちください!」
そして、ウィリアムの住む離宮を出て取り急ぎ鋏を持って戻って来た私は、たっぷりと布が使われたドレスのスカート部分に隠し、ツンと澄ましたモニカらしい態度で通り抜ければ、ただ居るだけが仕事になっている門番はいつも通りに見ているだけで何も言わなかった。
まさか、悪役令嬢モニカの中身が入れ替わったことなんて、わからないわよね。
この離宮へ本来なら禁じられている鋏を持ち込むという、やましいことをしている自覚はあるので、私はドキドキしていた。
王太子ウィリアムは彼の住む離宮から出られないように、彼らに見張られているのだ。
そして、使用人はウィリアムの目に触れぬように動き、彼に話しかけられても、決して話すなと厳命されている。目が死んでいるあの門番だって、例外ではない。
たった一人のつらい孤独の中で、彼の人生を真っ暗な不幸に染めてしまうために。
……そうだ。ウィリアムは王位継承権上の理由から、この宮に幽閉されていても王太子として生かされている。
現王とて今の妻の手前とは言え、自分の息子に対し酷いことをしている自覚はあるのだろう。こんな状況の中でも、自殺することを出来なくしているのだ。
「あ。その設定……鋏にも適応されているんですね。不便ですわ。わかりました! それでは、私が鋏を持ってきますので、少々お待ちください!」
そして、ウィリアムの住む離宮を出て取り急ぎ鋏を持って戻って来た私は、たっぷりと布が使われたドレスのスカート部分に隠し、ツンと澄ましたモニカらしい態度で通り抜ければ、ただ居るだけが仕事になっている門番はいつも通りに見ているだけで何も言わなかった。
まさか、悪役令嬢モニカの中身が入れ替わったことなんて、わからないわよね。
この離宮へ本来なら禁じられている鋏を持ち込むという、やましいことをしている自覚はあるので、私はドキドキしていた。
王太子ウィリアムは彼の住む離宮から出られないように、彼らに見張られているのだ。
そして、使用人はウィリアムの目に触れぬように動き、彼に話しかけられても、決して話すなと厳命されている。目が死んでいるあの門番だって、例外ではない。
たった一人のつらい孤独の中で、彼の人生を真っ暗な不幸に染めてしまうために。