仕事の出来る悪役令嬢、薄幸王子様を幸せにアップグレードしておきました。
03 幸せにします
何なの……物語の進行上で、キャンディスと出会う前のウィリアムは不幸でないといけないとは言え、あまりにこれは辛すぎない?
私は王太子ウィリアムには、とりあえず婚約者が居なければと定められた令嬢だから、宮に入ることは許されているけど、話すことと言えば彼自身を常に否定し続け罵る言葉しか口から出なかった。
いくらヒロインキャンディスが彼の前に現れれば助けて貰えるとは言っても、これではあんまりだと思うわ。
……少しくらい、彼の環境改善をしてあげても、良いと思うの。
「え。お前……本当に戻って来たのか……?」
髪を切るための鋏を持って戻って来た私を見て、大きなソファで寝転がりくつろいでいたウィリアムは、非常に驚いて身を起こした。
私がウィリアムに『毛玉を取らせてください』と言ったことを、白昼夢で見た夢幻(ゆめまぼろし)だと思っているのかもしれない。
これは現実なのよ。申し訳ないけど、頭にある毛玉は取らせてもらうわ。
「もうっ……お待ちくださいと、言ったではないですか。ほら、ここに座ってください」
私は彼の座っているソファの座面を指差すと、ウィリアムは不思議なくらい素直に指示に従ってくれた。
髪を整えるために切っても散らばらないようにと、私は彼にここに来る前に物色していた適当な白いテーブルクロスを被せて首のあたりで括った。
私はその姿を見て、ふふっと微笑んだ。
ずいぶんと可愛らしい、大きなてるてる坊主の出来上がり。
「……もう良い。よくわからないが、お前の好きにしろ。髪はまた生えてくるし、どうとでもしてくれ」
モニカの思惑がわからずに投げやりに言ったウィリアムに、私は大丈夫と肩をとんと叩いた。
「はい。仕事はちゃんとしますよ。ほら……」
私は王太子ウィリアムには、とりあえず婚約者が居なければと定められた令嬢だから、宮に入ることは許されているけど、話すことと言えば彼自身を常に否定し続け罵る言葉しか口から出なかった。
いくらヒロインキャンディスが彼の前に現れれば助けて貰えるとは言っても、これではあんまりだと思うわ。
……少しくらい、彼の環境改善をしてあげても、良いと思うの。
「え。お前……本当に戻って来たのか……?」
髪を切るための鋏を持って戻って来た私を見て、大きなソファで寝転がりくつろいでいたウィリアムは、非常に驚いて身を起こした。
私がウィリアムに『毛玉を取らせてください』と言ったことを、白昼夢で見た夢幻(ゆめまぼろし)だと思っているのかもしれない。
これは現実なのよ。申し訳ないけど、頭にある毛玉は取らせてもらうわ。
「もうっ……お待ちくださいと、言ったではないですか。ほら、ここに座ってください」
私は彼の座っているソファの座面を指差すと、ウィリアムは不思議なくらい素直に指示に従ってくれた。
髪を整えるために切っても散らばらないようにと、私は彼にここに来る前に物色していた適当な白いテーブルクロスを被せて首のあたりで括った。
私はその姿を見て、ふふっと微笑んだ。
ずいぶんと可愛らしい、大きなてるてる坊主の出来上がり。
「……もう良い。よくわからないが、お前の好きにしろ。髪はまた生えてくるし、どうとでもしてくれ」
モニカの思惑がわからずに投げやりに言ったウィリアムに、私は大丈夫と肩をとんと叩いた。
「はい。仕事はちゃんとしますよ。ほら……」