【短編】A pipe dream 〜ソレデモオモイエガク〜
プロローグ
風が体を包む。
その冷たさが、冬を奏でているような気がした。
うーんと……。
雨が体を纏う。
その冷たさが、心の中を表しているようだった。
うーん……。
「ッ、ッ……ハックション!!」
「ちょっと来夢!! 何でそんなにずぶ濡れなの?」
「あ〜、今日傘忘れちゃって、ッ……クシュン!!」
「何してるのよ、ほらこれで拭いて」
「ん、ありがと」
手渡されたタオルで雫が滴り落ちる髪の毛を拭き、体に張りつくジャケットを脱いだ。
冷えきった体に暖房の暖かい風が痛いくらい。
「まったく、今が一番大事な時だって言うのに」
横で大きなため息をもらしながらロッカーに私物を入れている九条 瞳(クジョウ ヒトミ)。
会社の同僚で、一番の親友。
「なかなかいいフレーズが思いつかなくてね」
私、綾瀬 来夢(アヤセ ライム)。
今冬発売される新商品のチョコのCMに使うフレーズに、頭を悩ませる日々を送っています。