【短編】A pipe dream 〜ソレデモオモイエガク〜
「失恋して落ちてた時にあるドラマに出会ったんだ。自分と同じような境遇の彼が必死になってて……」
「うん」
「その時俺は、その俳優からたくさんの勇気と元気をもらったんだ。で、単純だけど強く思ったんだよな。俺もあんな風に人の心を動かせるような俳優になりたい、とね」
真剣な眼差しで熱く仕事に対しての意気込みを語る霧島くんは、一点の曇りもない澄み切った目をしていた。
「霧島くんならなれますよ。私が保障します」
その言葉に嘘偽りは何もなかった――。
そんな私の思考を理解してくれたのか、フッと柔らかい表情を浮かべ、頭を撫でてきた。
「ありがと」
こんな時を過ごせるのも、今日だけ……。
トクンッと高鳴る胸は、私の勘違いってことにしておかないと。
そうじゃなきゃ、これからやってられない。
「あ、そう言えば! フレーズは決まったの?」
「えっ? 何で私が担当って知ってるんですか?」
彼の突然の発言に驚きを隠せなかった。
その時の表情は鳩が豆鉄砲くらったかのような、そんな表情だったんじゃないかって思うくらい。
「あっ、担当綾瀬さんだったんだ。今朝打ち合せをした時に、後はフレーズが決まればって聞いてたから」
「何だ、そうだったんですね。明日には霧島さんのところにも連絡が行くはずですよ」
フレーズか……。