【短編】A pipe dream 〜ソレデモオモイエガク〜
「思い描いて何が悪い?」
いつもより低いトーンの声色に、私を見据える真剣な眼差し。
彼の視線は痛いくらいに突き刺さってきた。
いい返す言葉も出ないくらいの迫力に、少し身をたじろぐ。
「ふーん……まぁいっか。あ、夢を語ってた綾瀬さん素敵だったよ」
それだけ言って笑顔を向けると、霧島くんはその場を立ち上がった。
「撮影には来るんだよね?」
いつもの柔らかな口調に戻っているな、と思いながら私は頷いた。
「はい」
「じゃあ、俺の演技楽しみにしてて」
自信たっぷりに言う霧島くんは本当に輝いて見えて、直視できないほど眩しかった。
それから居酒屋を後にした私たちは、別々の方向へと歩きだした。
頭の中に残っているのは霧島くんのあの言葉……。
“思い描いて何が悪い?”
いつからこんなに自分の気持ちに妥協するようになったんだろう。