【短編】A pipe dream 〜ソレデモオモイエガク〜
そうして瞬く間に日は過ぎ、撮影当日を迎えた。
あの日以来、久々に霧島くんと会う。
その存在感は無名の新人でありながらも格別だった。
慌ただしく撮影の準備が始められ、私はスタッフの挨拶まわりと準備に終われていた。
こうして遠くから見ていると手の届かない人。
それだけ私たちの間には距離があった。
霧島くんなら思い描いていた夢、叶えることできるよ。
そんなことを心の中で思いながら、霧島くんと接する機会もなく着々と撮影の準備は進んでいった。
「それでは撮影に入ります」
スタッフの声が響き渡り、辺り一面が一瞬のうちに静寂になる。
ジャンパーを羽織っていた霧島くんは、それを脱いでスタッフに手渡し定位置につく。
その時だった――……。
一瞬、私へと視線を移し、爽やかな笑顔を向けた。
そんな気がした。
勘違いも甚だしいかもしれないけど。