【短編】A pipe dream 〜ソレデモオモイエガク〜
「カーット!」
監督のその声をひっきりに、辺りはすごいざわめきを見せた。
……すごい逸材。
今まで無名だったのが不思議なくらいの演技力。
その場にいた誰もが目を奪われ惹かれた。
まるで本当にそこに、愛しい彼女がいるかのような錯覚さえ起こした。
「彼はすごいな……。これは売れるぞ」
「そうですね」
部長の言葉に深く共感し相づちをうった。
夢、叶うよ。
霧島くんならやっていける、やっぱり私の目に間違いはなかった。
少し羨ましくなるくらい、彼に惹かれた。
まさかカイロの彼が、こんなにもあたたかな温もりを表現してくれるなんて。
そうして何度か撮り続け、外での撮影は無事に終わった。
「おつかれさまでしたー」
その言葉を皮きりに、現場は一瞬にして和やかな雰囲気と化す。
たくさんのスタッフや関係者に挨拶をしながら、霧島くんは私の元へもやってきた。
「おつかれさまでした」
彼の演技を見た後だからか視線がとても甘く、その熱に酔いしれそうになった。