【短編】A pipe dream 〜ソレデモオモイエガク〜
「おつかれさまでした。
……いつか霧島くんが憧れる俳優を越えますよ。それくらいすごい演技でしたよ。スタジオ撮影には行けないけど頑張ってくださいね!」
「えっ? 綾瀬さんスタジオには来れないの?
……そっか」
私の名前を覚えていてくれたことに胸が熱くなる。
こんないちスタッフのことまで、ちゃんと覚えていてくれて。
それだけで嬉しかったよ。
少し残念そうな霧島くんの表情が気になるけど。
「ほら、霧島くん呼ばれてますよ。また機会がありましたらよろしくお願いします」
そして一礼をして、私はその場を去ろうとした。
「じゃあ、絶対、編集した映像は確認してね」
「もちろんですよ」
霧島くんの発言を不思議に思いながらも、そのことには触れずにそこで会話は終わった。
そして、瞬く間に時は過ぎ、バレンタインも近づいた一月末――。
ようやく編集の終わった映像が出来上がったとの報告を受け、私たちは映像の確認に行った。