【短編】A pipe dream 〜ソレデモオモイエガク〜
仕事も終わり社内を出ると、あの日、霧島くんと会った日と同じように閑散とした町並みだった。
身が縮こまるような寒さだけど、心の中はほんの少し温かかった。
吐く息で真っ白になる視界――。
まるでデジャヴかのようにそこに現れる人影。
「綾瀬さん!」
「霧島くん……。どうして?」
本来ならそこにいるはずのない彼の姿に、何度も瞬きをする。
アハハッと聞こえてくる笑い声は、確かに霧島くんのもの。
「立ち話もあれだし、この前の店行こうか」
そう言うと、またもや返事も聞かずに歩き始めた。
「こんなとこ見られたらまずいでしょう?」
「ハハッ、まだ無名の新人なんで大丈夫」
この前と同じ返事に、二人で顔を合わせ笑いだした。
そうだね……。
まだオンエア前だし、少しくらいならいいかな。
霧島くん引き下がらなさそうだしね。