【短編】A pipe dream 〜ソレデモオモイエガク〜
案内された個室に着くなり、ラフな格好になる霧島くんにうまく目が合わせられない。
そうして少しの沈黙が続いた後、霧島くんから口を開いてきた。
「見た?」
「……見ました。どうして?」
どうして、私が一番使いたかったフレーズが使われたの?
一度は決まったはずの台本。
霧島くんの一言で変わったんだよね。
部長が言っていた。
霧島くんが私があげた候補のフレーズを、すべて見せて欲しいと。
そして、私が一番気に入っていたフレーズがいいとの一点張りだったと。
「風が体を包む。その冷たさが、冬を奏でているような気がした。
雨が体を纏う。その冷たさが、心の中を表しているようだった」
突然そのフレーズをCMと同じように言ってきた霧島くんに驚き、視線を合わせた。
まるで、あのCM撮影をここで行っているかのように降り注がれる熱い視線。
「音を感じたんだ」
「……音?」
頬杖をつき、視線をそらすことのないまま私を捉え話し続ける。
私はその視線に捕まり、目を逸らせないでいた。