【短編】A pipe dream 〜ソレデモオモイエガク〜
「置いていかないでよ!」
「ハハッ、ごめんごめん。そう言えばキャストは?」
行き交う人に挨拶をして足早に歩きながら、瞳に問い掛けた。
「あ、そうだったね! えーっと、無名の新人だって。確か名前は……。あれっ、何だっけ?」
「新人、か。なら名前聞かなくてもいいや」
名前聞いたって誰か分からないなら、イメージ湧かないだろうし。
と思っていた矢先、瞳は突然声を上げた。
「あーっ、思い出した!」
折角思い出してくれたことだし、まぁ聞くだけ聞いてみようかなと思った私は、瞳の言葉の続きを聞くつもりだったんだけど。
「……霧島彬?」
「そうそう、きりしまあきら、って!!」
背後から聞こえてきた低く響くような声に驚いた瞳は、足を止め上半身だけ反転させた。
もちろん、私もその聞きなれない声に驚いて瞳と同じように行動したわけだけど。
……誰?
この爽やかな男は。