【短編】A pipe dream 〜ソレデモオモイエガク〜
入社して早五年――。
実力・実績ともに伸ばしてきた私に、ようやく任された大仕事。
それが今回のCMだった。
バレンタイン商戦に向けて動きだしたこの企画。
コンセプトは“温もり”
口の中に入れると瞬く間に溶けて消えていき、いつまでも甘い香りを残し続ける。
【新しい口溶け】
それが新商品のチョコの売りだった。
広告代理店の人たちと共同で企画を進めていき、幾度となく打ち合せを行った。
今回はクライアントである当社が制作までの工程に携わった。
新しい試みとして、若者の意見を採用していこうという方針から、企画のメンバーの一員となり試行錯誤の毎日。
もちろん、やりがいはある。
この業界に入ったのも、人を元気にさせるようなお菓子を作りたいって言う単純な動機。
私自身、疲れた時にいつもチョコを食べて元気をもらっていたから。
いつか――。
私がみんなに同じような気持ちを送り届けることができれば。
そう思っていた……。
だから、今回のCMは願ってもいない大チャンスだった。