罪深く、私を奪って。

四角い密室

四角い密室



次の日。
重い足取りで更衣室を出る。
着なれたはずのこのワンピースの制服が、いつもよりずっしりと重く感じるのは、間違いなく私の憂鬱のせい。
出来れば今日は石井さんの顔を見たくないな。
そう思いながら休憩室の前を通ると、椅子に座って何かを読む亜紀さんの姿があった。
昨日の出来事の後ろめたさがよみがえり、反射的に視線を反らして足を早める。
真剣な表情で雑誌を読んでいた亜紀さんは、そんな私にはまったく気付いていないようだった。
ほっとしながらも、足が止まる。
このまま亜紀さんの前を素通りしていいのかな。
昨日の出来事を隠して、何も言わず知らないふりをするなんて。
それじゃあ、あの最低な石井さんと同じだ。
……でも、なんて?
亜紀さんになんて言えばいい?
まるで鉛でも飲み込んだみたいに、胃の辺りがずっしりと重くなる。
止まった足を亜紀さんの方に向かわせようとしても、思うように動かせず、私はその場に固まってしまった。
その時、
「あ、待って! ちょうどよかった」
背後から聞こえた亜紀さんの声に、私がここにいる事を気付かれてしまったんだと、複雑な気分で振り返った。
けれど。
その言葉は私ではなく、ちょうど喫煙室から出てきた石井さんに向けられたものだった。
「ねぇ石井。これとこれならどっちがいい?」
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