奏でない音を
♪2

積極的に、どころか話すことさえもままならないあたしは、それから何か変わったかと言えば変わってなくて。

時々見かける姿に胸をときめかせ、あの子と一緒にいるところを見ては落ち込んだ。


「もうコクっちゃいなよ! 玉砕するにも奪うにも、告白しなけりゃ始まらないじゃん!」


はぁー、とため息をついて、机に突っ伏すあたしに向かって、杏里が容赦せずに言う。

杏里とは小学生のときからの付き合いで、そのためか遠慮というものがない。


それでも彼女が皆に慕われているのは、面倒見のいい性格故か。

今ではちゃっかりバレー部部長、生徒会会計なんて役職についている。


何の取り柄もないあたしとは、大違い。

何にせよ、杏里は親友であり良き相談相手だ。

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