奏でない音を
篠原美優。14歳。吹奏楽部、パーカッションパート。
コンクールも終わり先輩も引退し気の抜けた感じの今日この頃、残暑の抜けきらない日差しで生暖かくなった音楽室で、ひとりリズムを刻んでる。
なぜかみんな音楽室で練習しない上、パートの後輩もやめてってしまったため、音楽室は現在あたしの独占状態なのだ。
誰もいない音楽室は、少し寂しい。
だけどあたしが彼を見つめていても、注意してくるひともいない。
そう、音楽室からは、グランドで活動してるサッカー部がよく見える。
……あ、ミスった。
彼の様子に、思わず微笑む。ついでに手も止まる。
かち、かち。
止まったリズムに、取り残されたメトロノームが静けさの中に響いていた。