奏でない音を

あたしの家も同じ方向だから、そういう意味では問題ないけど……。

いやいやそういう問題じゃない。


杏里にも一緒に来てもらおうと思ったのに、事情を知らない彼女は放課後教室に迎えに来た安藤くんを見、

「何、一緒に帰るの!? やるじゃん美優頑張って!」

と誤解したまま変な気を使い先に帰って行ってしまった。


隣のクラスの光樹もすでに帰っていて。

しかも今日に限って部休だし。

あたしに選択肢はなかった。


学校から、歩いてだいたい15分。

ひたすら沈黙が流れるなか、あの子の暮らす、アパートに着いた。

あの子の家は、その2階。ちなみに安藤くんの家は、その上の階にあるらしい。


「じゃ、篠原さん、ありがと」

彼はあたしから荷物を受けとると、あの子と寄り添ってアパートに消えた。

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