奏でない音を
クラス発表では、あたしのクラスはオリジナル恋愛コメディ劇をやることになって。
なぜかあたしが主役なんてやる羽目になった。
「無理だよ、杏里、あたし主役なんてガラじゃないし」
「大丈夫だって! 美優なら絶対衣装似合うし!」
だからって!
何で文化祭の劇の台本に、キスシーンとか入ってるの!? おかしくない?
「やっぱダメかぁ」
残念そうに呟くのは、台本を書いた文芸部の子。
ダメに決まってるじゃないか。
杏里が似合うって断言した衣装は、あたしは当日まで見せてもらえなかった。
だけど見た途端、あたしは叫ぶ。
「な……っ、何これ!?」