奏でない音を
♪4
「あっ美優、光樹も! よかったよー、お疲れ!」
ステージを降りたところで、杏里が笑顔で手を振った。
杏里はこの後、閉会式で、司会をやるって言っていた。
そうして幻想世界はやがて、あっけなく終わりを告げる。
残るは片付けだけ。
「……この衣装、どうするの?」
「え? あぁ、美優にあげるよ」
いりません。
……なんて言えるはずもなく、けれど捨てるのも悪い気がして、あたしはそれをかばんに入れる。
中学校の文化祭の思い出として、とっとくか。
しばらくすると、学校は、今までの風貌を取り戻した。