奏でない音を

ふわり。


ぱさ、と白い何かがふいに、吹き抜けた風に落とされた。

視界の端で捉えたそれに、はっとあたしは我に返る。


いけない。

つい、夢中になっていた。


もう一度だけ彼を見て、それから屈んで白いものを拾う。


流行りの曲の、ドラムの楽譜。

文化祭でやるやつだ。


……あ、そういえば、練習しようと思ってたっけ。


時計を見れば、部活終了時間まで、あと30分くらいしかない。


冬が近づくにつれて、練習時間は減っていく。

時間を少しは気にかけないと、基礎練だけで終わってしまう。

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