奏でない音を
「光樹ー、杏里ー……」
あたしの様子にふたりは顔を見合せて、どうやら何か感づいたようで。
「美優、頑張ったね」
ふたりの気遣いが嬉しくて、初めて涙が零れた。
まだ明るかった空も、夕焼け色に染まって。
3人で、並んで歩く。
まだ分からない、次の恋に向かえるか、想いは消えないままなのか。
だってまだ、恋愛初心者だし。
だけど忘れない。
きっとこの気持ちは、今だけのものと思うから。
end.