奏でない音を
いつまでも佇むあたしを心配してくれたのか。
「美優……、大丈夫?」
遠慮がちに、光樹があたしに声をかけてきていた。
だけど大丈夫なんて答える余裕ない。
でもこのままじゃ、光樹に悪い。
だからやっと、
「大丈夫……だから、早く帰ろ?」
それだけ、言った。
光樹は勘のいい方だから、きっとあたしの想いに気づいているだろう。
それでも深くは聞いてこないのは光樹のさりげない優しさで、
それでも何も言わないのは、あたしの甘えだ。
光樹は大事な友だちだから、隠し事なんかしたくない。
だけど気持ちを話すのは、弱い自分を晒す気がして、大したものでもないプライドが、そうすることを阻んでいた。