桃色
私は遠くを見ながら言う。


「美鈴ちゃんがいなかったらね、今の私はいないの・・・。それに、きっとゆぅ君は私のこと好きになることもなかったと思う」

「何や、それ・・・」


ゆぅ君はまったく意味が分からないみたいだった。


「周りの目とかさ、みんなに何か言われることなんてね、本当はそんなに気にならないよ。ゆぅ君と一緒にいられるんだって思ったらそれぐらい我慢できるの。でもね、我慢できないことがあったの・・・」


ゆぅ君は少し考えているみたいだった。


「それってどういうことや?何があったんや??」

「ごめん。それは言えない・・・」

「俺って、そんなに頼りないか?」


ゆぅ君は寂しそうな顔をして言った。


「違うよ。私の問題だから・・・」


私はとっさにこんな言い訳をした。



この場所で始まってこの場所で終わりを迎える。


こんな結末を誰が予想した?


私、こんな風に終わらせたくなかったよ。


ゆぅ君の優しさや悲しみが私の心をかき乱す。


本当は別れたくないよ・・・。


何度この言葉を言いそうになったか。

私は力いっぱい歯を食いしばった。


泣けない、泣かないよ。



< 122 / 500 >

この作品をシェア

pagetop