桃色
「ごめんな。もう、大丈夫だからな・・・」

タケルが優しく抱きしめてくれる。

温かい・・・。

やっぱり、タケルは優しいね。


「泣けばいいって思ってるの?タケル、
 あんたもいい加減、こんな子のこと
 忘れなさいよ。あんたが優しくするから、
 この子もこうなるのよ!」

「いい加減にするのは姉貴の方だろ!
 桃子の何を知ってるっていうんや?
 桃子は何も悪くねぇんだよ!俺らがどう
 思ってようが関係ないだろ?悪いけど、
 帰ってくれるか?」

タケルが奈々さんに帰れって言ってる・・・。


「分かったわよ!!」

そう言うと、奈々さんはドアをバターンと
閉めて、帰って行った。



「最悪やな、あいつ・・・」

タケルが小さくそう呟いた。

「・・最悪なのは、私だよ・・・」

「何、言ってんだよ。桃子は何も悪くねぇよ。
 姉貴さ、未だに健二のこと引きずってん
 だよ。もう、お互い結婚してんのに、
 馬鹿だろ?」

タケルはそう言って笑う。


「奈々さんは馬鹿なんかじゃないよ。
 それだけ、健ちゃんのことが好きだった
 ってことでしょ?」


私が泣きながらそう言うと、タケルはまた
ごめんって謝ってきた。


タケルが謝ることなんて、
何一つないのに・・・。


< 413 / 500 >

この作品をシェア

pagetop