平安物語【完】
*初夜
「今宵、東宮様のお召しがございます。」
遣いの女房の知らせに、私の周りの女房(女の召使い)たちが沸き立ちます。
「…姫様?
お顔の色が優れませんが」
私の異変に気づいたのは、乳母でした。
「大事ありません。
少し…緊張しているだけです。」
すると乳母はやんわりと微笑んで、
「不安なのですね。
大丈夫ですとも、姫様は私の見込んだ姫様なのですから。
堂々としていらっしゃいませ。」
と言いながら私の手を取りました。
本当は、もっと詳しく、何をして何を話せば良いのか教えて欲しい…
けれどそんなみっともないことは出来ません。
高貴な姫としての気品を保たなくては…