平安物語【完】
「大慌てでしたね?
これが、梅壺の宮ですよ」
「…もう」
からかうように仰る東宮様に呆れて見せます。
姫宮といえば、先ほどまでの泣き顔はどこへやら、にこにこと絵巻物を指差して何か仰っています。
―落ち着いて拝してみると、唇やお鼻の形なんかは東宮様にそっくり。
本当に、東宮様のお子なのだわ…
そう思うと、私の心に密かに住まう嫉妬心が暴れ出しそうになりましたが、やはりこの姫宮の微笑ましい可愛さに心が穏やかになるのでした。
―ならば、唇とお鼻以外は御息所殿に似ていらっしゃるのかしら…?
少し…カマをかけてみましょうか