平安物語【完】



「え?」

意味がよく分からない…と思って聞き返すと、東宮様はいたずらっ子のようにお笑いになりました。

その表情を見ていると、姫宮のおてんばは東宮様譲りなのでは…と思われます。


「宮が歩けるようになったので、梅壺から昭陽舎までお散歩しているのですよ。

その途中に弘徽殿があるので、素通りするのもいかがかと思ってお訪ねした…という建て前です」


―そう、東宮様の昭陽舎と御息所殿の梅壺の間に、私の弘徽殿があります。

御息所殿が弘徽殿の前を通って昭陽舎へ行くのを、幾度となく見送っております…


「まぁ…」

ふふっと私が笑うと、東宮様もお笑いになって、姫宮までにっこりと微笑まれました。

なんとまぁ…お可愛らしいこと。



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