平安物語【完】



私が歩む衣擦れの音に気付いた殿方が、こちらを向かれました。

もちろん東宮様なのでしょう。


恥ずかしくて、顔の前に扇をかざしました。

簾や几帳(目隠しに立てるカーテンのようなもの)を隔てずに、父以外の殿方と会うなんて、初めての事なのです。


扇を持つ手が震えているのが分かります。


私の手、静まって…


東宮様から少し距離を置いて座ると、女房たちは皆下がりました。

今この部屋にいるのは、私と東宮様の2人だけ…。



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