平安物語【完】
「本当ですか?」
と心配そうに私の顔を覗き込んで仰いますが、私は目を反らして頷くだけなので、諦めたように微笑まれました。
―どうして、私はこんなに可愛げというものが無いのでしょう…
「そうだ、姫に贈り物を頂いてしまって、ありがとうございました。
届いた時にはもう寝てしまっていたのですが、大層喜んでいたと文が参りました。
ちょうど御息所が私の所へ着いた時に、あなたのお文と人形を持った女房が追いついて参ったのですよ。
御息所の感動のしようと言ったらありませんでした。」
嬉しそうに仰る尚仁様につられて私も微笑むものの、心は荒涼としていました。
―まるで、御息所殿が御本妻のように仰いますのね…
あんな可愛らしい姫宮を授かるご縁がおありなのですから、そのように思し召すのですか…?