平安物語【完】
「弘徽殿の女御ですね。
さぁ、そんな扇でお顔を隠さないでください。」
そう言って、東宮様が扇を持つ私の手にそっと触れます。
私は思わずびくっとしまいました。
「あ…失礼…。」
東宮様は申し訳なさそうに仰って、お手を戻されました。
ちらりと拝したお顔は…
少し悲しそうな、端正で優しそうなお顔立ち。
東宮様も緊張しておられるのか、少し紅潮しておいでです。
そして何より…お若い。
私は十七歳、東宮様はまだ十四歳でいらっしゃいます。
お可愛らしい中にも男らしさがおありなのは、やはり元服なさったからでしょうか…。