平安物語【完】
「女御…?」
尚仁様のお声に我に帰りました。
―今、女御とお呼びになったわ…
分かっていたとは言えやはり悲しくて、思わずぼんやりと尚仁様の御願を見つめてしまいました。
「女御?
どうして…泣くのですか?」
はっとして目に手をやると、本当に私、泣いておりました。
尚仁様の御前で泣くなんて、入内当初のいつぞや以来のことです…
「わ、分かりませぬ…」
急いで袖で顔を隠したのも虚しく、尚仁様の左手が強い力で私のその腕を掴み、右手が顎に添えられて顔を上げさせられてしまいました。