平安物語【完】
「…また、ご気分を害してしまうような話であったらお許しください。
宮は、あなたから頂いたお人形を『にょごさま』と名付けて遊んでいるようなのです。
よほどあなたが気に入ったと見えます。
どうぞ、たまに宮と遊んでやってくださいませんか。
御息所もあなたの温情に感激しきっているので、そちらは気になさらないでください。」
私は思わずぱっと顔を上げて、
「どうして気分を害したりなどいたしましょう。
そのお話を伺って、嬉しいばかりですのに。
東宮様と御息所殿がお許しくださるのならば、私こそ姫宮様に遊んで頂きとう存じます。」
と少し早口にまくし立ててしまいました。
尚仁様はそんな私を心底嬉しそうに見つめ、
「あぁ良かった。
私の可愛い姫宮があなたとお近づきになれたら、私にとってこんなに嬉しいことはありません。
ありがとう。」
と仰って私をひしと抱きしめられます。
尚仁様がお喜びになる心理が私にはよく分かりませんが、私も尚仁様も嬉しく御息所殿も認めてくださって、更に姫宮様がお喜びくださるのならばこんな良いことはないでしょう。
私もまた、心底嬉しゅうございました。