平安物語【完】
私は暫しそのお文を読み直して心を痛めておりました。
長年連れ添った伴侶が病に倒れるなんて、宮様はどんなに心配なさっていることでしょう…
「紅葉の上は本当に素晴らしい奥方なのです。
兄とってなくてはならない人…
私の方でも祈祷の僧など遣わそうと思うのですが、どう思われますか?」
「そうなさるのが宜しいかと存じます。
宮様も不安でいらっしゃいましょうから…」
突然尋ねられて驚きながらも、そうお答えしました。
―世間では北の方に相談するような事を、私にご相談くださるなんて…
こんな時に不謹慎ですが、嬉しい気持ちが胸に広がりました