平安物語【完】
すると尚仁様は私をひしと抱きしめなさって、
「あぁ、あなたが病に倒れでもしたら私はどうしよう…
どうかお願いだから、少しでも具合が優れない時はすぐに言ってくださいね
縁起でもない話だけれど…」
そう仰るのです。
私はもう今度こそ嬉しくて嬉しくて、こんな愛しい方をおいては死ねまいと思われます。
「お案じくださいますな。
それより、東宮様こそお身体をおいといくださいしませ…」
幸せと切なさと愛しさが胸にじんわりと染み入ります。
我が身より大切な殿方と結ばれるとは、私はなんと幸福な女なのでしょう…