平安物語【完】
新婚
*三日
――昭陽舎から帰ってきた道のりも、覚えてはおりません。
東宮様は、下腹部が痛む私を最後まで案じてくださっていました。
―まだ、離れるに忍びない…
迎えの女房にそう呟かれるのを聞いた時、私は思わず涙が零れました。
私も、まだお側にいたい。
…しかしそんな事を言えば軽々しい女と思われるかもしれない。
そう思い、私は東宮様のお顔を見ずに部屋を出ました。
…お顔を見れば、泣いてしまってご心配をおかけするでしょうから…