平安物語【完】
そして今私は、弘徽殿の我が部屋で座っております。
昨日はなんと美しい部屋かと思われたこの部屋も、東宮様がいらっしゃらないだけで色褪せて見えてしまいます。
…早くお会いしたい。
乳母は、惚けたようになっている私を案じていましたが、疲れているとだけ言っておきました。
たった一晩一緒にいただけでこんなに惹かれているなんて、知られたくございませんので…。
昨日までは東宮様をお慕い出来るかと案じていましたのに、今日にはこんなにも恋い焦がれているなんて、自分でも笑えてしまいます。