平安物語【完】
私はそんな尚仁様が愛しくて愛しくて、そっと首に腕を回して抱きつきました。
「存じ上げておりますとも…」
そう耳元で呟くと、尚仁様は何やら真っ赤になられてますますお顔を背けられますので、少し不安になって
「あなた様…?」
と尚仁様を上目遣いに覗き込みますと、大きなわざとらしいため息を一つつかれて
「…誘っているのですか?」
と仰いました。
仰る意味がよく分からず「え?」と聞き返しますと、「全くあなたはタチが悪い…」などと呟かれて不意に私に口づけなさるのでした。