平安物語【完】
「今宵も、お召しにございます。」
昨日と同じ遣いの女房が、伝言に参りました。
乳母を始めとした女房達は、当然の事として支度を始めます。
一人心が弾んだ私は、自然と口が動いて
「ご苦労でした。」
と発していました。
普通女主人が一女房に礼など言いません。
お遣いは驚いたような顔をして、畏まって出て行きました。
女房達も、驚いたような顔をしてしまったのを急いで取り繕っています。
すると乳母が一言…
「あなた様は、東宮様のご寵愛を頂くべき高貴な女御様とおなりなのです。
あまり軽々しい事はなさいませんよう。」
私は軽く頷いて、顔を逸らしました。
重々しく…重々しくしなければ、東宮様には釣り合わない…。