平安物語【完】



そう仰いながら、零れそうな涙を隠そうと俯かれます。

私はただ、尚仁様のお膝に手を重ねてうなだれるしかありませんでした。


――出家とは、生きながらに死ぬこと。

この世での喜びや憂いといった煩悩の一切を振り捨てて、来世のことだけを胸に修業に明け暮れる日々…

まだまだ先の、縁遠いと思っていたものが急に現実味を帯びてきた心許なさは、計り知れるものではございません



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