平安物語【完】
「麗景殿の姫宮様の御袴着の儀の後、兄宮様をお呼びして宴を開いてくださいませ。
こんな生き別れは、あまりに辛ろうございます。」
涙を袖で押さえながらそう申し上げるのですが、
「さて…あの兄が、出家した身で宴に応じるかどうか…
頑固なところがありますから…」
と、ご表情は晴れません。
「あなたまで辛い気持ちにさせてしまって、申し訳ありません。
兄にとっては、亡き紅葉の上の菩提を弔いながら二人で生まれ変わる来世を想うのが、今の願いなのでしょう…
私達が辛いからと言って、兄の願いを曲げることは出来ません。
さぁ、もう休みましょう。
そんなにお泣きにならないで…」