平安物語【完】



「ありがとう」

そう微笑んで仰って、私を部屋の奥へと促します。

向かい合って座り、尚仁様が「さて…」と仰いました。

「一体どうしたのです?

顔を見て泣かれたのでは、全く不安になってしまいますよ。」

優しく冗談めかして仰っていますが、その瞳は真剣そのものです。


「あなた様が、帝とおなりあそばしても、以前と何ら変わっていらっしゃらなかったので…

安堵いたしました。」

泣いてしまったことが恥ずかしく、目を逸らしながらそう申し上げました。



< 341 / 621 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop