平安物語【完】
「ありがとう」
そう微笑んで仰って、私を部屋の奥へと促します。
向かい合って座り、尚仁様が「さて…」と仰いました。
「一体どうしたのです?
顔を見て泣かれたのでは、全く不安になってしまいますよ。」
優しく冗談めかして仰っていますが、その瞳は真剣そのものです。
「あなた様が、帝とおなりあそばしても、以前と何ら変わっていらっしゃらなかったので…
安堵いたしました。」
泣いてしまったことが恥ずかしく、目を逸らしながらそう申し上げました。