平安物語【完】
―トントン
「女御様…お帰りのお時間にございます。」
部屋の外から声がかけられ、尚仁様と見つめ合っていた目をふと落として
「…わかりました。
少し待っていて下さい。」
と答えました。
そのまま身支度を始めると、不意に尚仁様に手を掴まれました。
ゆっくりと尚仁様を見上げると、
「中宮宣下を急ぎます。
それでも、早くても明後日になるでしょう。
障りが生じればいつになるか分かりません。
それでも良いですか…?」
と仰せになりました。
私はにっこりと微笑んで
「はい。」
と答え、ゆっくりと立ち上がって、部屋を辞しました。