平安物語【完】

*新妻




弘徽殿へ戻ってぼうっとしていると、今日も中宮について噂をし合う声が耳に入りました。


―今宵お願いした事を、せめて乳母にだけは話しておきたい。

そう思ったのですが、数日前から里帰りをしていて居ません。


「乳母はいつ帰って来るのだったかしら?」

そう、近くに控えていた弁に尋ねました。

弁の夫である元・頭中将は、今は右近衛大将に昇進しています。

右大将殿と弁とは今も懇ろで、最近では里帰りに右大将宅に迎えられるのだそうです。

右大将殿には奥方もいらっしゃらないため、身分差はあっても、弁が正妻のように扱われています。



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