平安物語【完】
突然の事に唖然として東宮様を見ると、東宮様はにっこりと笑って
「端正なお顔のあなたは比類無く美しいですが、そのように自然なお顔はまた格別ですね。」
と仰いました。
私は口をぽかんと開いていたのに気付いて、急いで扇で隠そうとしましたが、東宮様に抱きしめられていて体の自由がききません。
「おっ、下ろしてくださいませ。」
恥ずかしくて一生懸命顔を逸らして抵抗しますが、東宮様は一層にっこりとなさって、
「そんなお顔をなさっても駄目ですよ。
余計離したくなくなるではありませんか」
と、下ろしてくださる様子はありません。